小林 トイレは排泄のための場所という考えが強かったのですが、自身を振り返ってみるとコミュニケーションの場であったり、逆に一人になりたい時にも利用していたことを思い出しました。この5、6年でトイレに対する多様な考え方が生まれていると感じています。渋谷区としても男女共用個室トイレの場所や内装や設備、機能など多方面で悩みながら進めているところなので、今日は貴重なお話を聞け、今後の整備の参考になりました。豊貞 今日は様々なお話がありましたが、先進事例をお示しいただいて、新しい時代のトイレが実際に提案され、さらにブラッシュアップの過程にあることをとても嬉しく思いました。学校が複合施設や避難所など多種多様な使われ方をすることで、トイレは今まで以上に優先されるべき存在であると改めて思いました。トイレについての研究は奥が深く、皆さんがとても想いを持って学校施設整備に携わられていることに感動しました。加賀美 校舎の面積には制限があるので現実的にどこまでニーズを反映させて整備していくかで悩むと思うのですが、優先的に実現したい事柄はありますか。小林 バリアフリートイレや広めのブースは優先度が高いと考えています。またオストメイト対応にも留意しています。加賀美 目黒区では、男女共用個室トイレは複数設置したいと考えています。LGBTQ団体の方と意見交換をさせていただいた際に一つしかないとそれを使いたい方が気を使い、使いづらくなってしまうという声がありました。複数あれば自分が使ってももう一つは空いているので気持ちのハードルを下げられるメリットがあります。三嶋 さらに、カウンセリング室や保健室、会議室をそれぞれ配し、不登校の子どもの登校時に利用できる部屋として計画しています。その子どもたちがトイレを使う場合は「個室トイレ」を利用できるよう検討しています。加賀美 昇降口も分けてあげたいと考えていまして、メインとは別に時間をずらして入れる箇所を設け、「個室トイレ」もなるべく近くに配置することで他の子どもと会わない選択ができると思っています。大内 渋谷区も考え方としては近く、昇降口とは別で保健室へも外から直接入れるようにし、トイレもその近くに配置するよう検討しています。特別支援教室がある学校では、そばに専用のトイレを設け、シャワー室も整備しています。加賀美 新しい時代の学びを実現する学校においては「学校施設全体が学びの場」となることが重要であり、トイレについても排泄するためだけの空間ではなく、そういった考え方が必要だと思います。また、決まった使い方しかできないのではなく、手を加えやすい設計も重要になりますし、目黒区としてもいろいろなことに挑戦しながら、時代の変化に応じて、都度軌道修正していく柔軟さが求められていると感じています。三嶋 かつて子どもたちが気持ちを整理したり、落ち着ける場所としてDENが設けらることがありました。その背景から同じような悩みはずっと前からあり、今後はトイレがその役割の一部を担うかもしれません。DENとトイレの関係のように、ちがう視点から見るとちがった解決策が出てくるのではないかと思います。スペースがないと何もできないので、一番重要なのは、計画の最初の段階から必要な要素を含めていくことだと思います。大内 使う人もいろいろな方がいらっしゃるので、その方々に合わせた施設の整備が必要だと思っています。トイレは、毎日複数回誰もが使う場所なので、落ち着けない場所だと普段の生活にも支障があります。特に多感な年代の児童・生徒が少しでも安らげる空間に整備ができたらと思います。また、つくって終わりではなく、50年後、100年後も、トイレを使う人たちに、私たちがチャレンジした想いなどを伝えていくためにマニュアルを整備するなど、受け継いでいくための仕掛けや工夫も大事だと改めて感じました。※4©2025 Shibuya City Office All Rights Reserved.©2025 Shibuya City Office All Rights Reserved. ─ 最後に、新しい時代の学校施設のあり方を考えたときにトイレはこれまでと比べてどう変わっていくとお考えでしょうか。 また、学校施設の中でトイレはどういう存在で、どういう役割があると考えられていますか。─※DEN:英語で「巣穴」を意味し、「隠れ家的な部屋や小空間」を指す言葉として用いられる。座談会ご出席者(最前列)と学校のトイレ研究会 研究員「渋谷区が考えるこれからの学校施設」より渋谷区のトイレプラン例● 児童・生徒用トイレ(各フロアに設置 )● ユニバーサルデザイントイレ( 教員・地域の利用が多く見込まれる箇所に設置するトイレの配慮参考例 )
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