学校のトイレ研究会研究誌28号
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新しく誕生した校舎の外観には、随所にスチールのルーバーが施されています。デザイン的なアクセントとして建物を飾っているように見えますが、実はそれだけではありません。岐阜県内でも有数の豪雪地帯として知られる荘川地域。半年近くの長い期間、地域全体が積雪対策を取る必要があり、学校も例外ではありません。そのため、屋根の雪下ろしや雪囲いなど、落雪対策も保護者といっしょに行われてきました。今回の荘川さくら学園の設計に関しては何度かワークショップが開催されましたが、そこでも要望として出されたのが落雪対策の負荷を軽減することでした。今回、採用されたスチール製のスノーガードは、屋根からの雪を粉砕し、一度にまとまって落下することを防ぐと同時に、雪囲いの機能も持ち落雪や吹雪によって窓ガラスが破損することを防ぎます。また、アリーナの壁面には太陽光パネルを設置。通常なら屋根部分に装着することが多いですが積雪によって埋もれてしまうことを回避することと、積もった雪で反射する太陽光もエネルギーに変換することを考慮しています。そういった豪雪地帯への対策は、トイレの設計にも反映されています。寒冷地対策として手洗い器はすべて電気温水器付きの自動水栓で手をかざすだけでお湯が出ることはもちろん、トイレ内には暖房用の電気パネルを設置。便座も温水洗浄機能付きのあたたかい便座が採用されています。さらに上水道は、凍結防止装置が稼働しています。12設計を担当した大建設計の大岩正輝さんが、校舎をデザインする上で大切にしたのは、愛着を持っていっしょに成長できる学びの場づくり。その視点は、トイレのデザインにも生かされ、まるで家にいるようにほっと心が和むよう、校舎と同じように木のぬくもりが漂う空間に仕上げられています。また特別支援学級の近くにあるトイレの入り口部分には、ベンチを設置。ゆっくりと座って友だちと談笑したり、教科書や筆記用具をトイレ使用時に一時的に置いたりすることもできます。様々な配慮や設備が施されたトイレに対して都竹克彦校長先生は「運動や遊びなどでケガをした子どもや、衛生面を気にする子ども、学校のトイレに不安を感じていた子どもたちも安心して使用できることがありがたいですね」と話します。校長先生をはじめ、教職員の方々が児童や生徒一人ひとりと丁寧に接し、育てていこうというきめ細かさが、その言葉から伝わってきます。岐阜県高山市太陽光パネルスノーガード教室教室と廊下との間の壁をなくし、開放的な学習空間に。アリーナ2階トイレ木材を多く用い、ほっとする空間にデザインされたトイレ。年齢や身長の異なる子どもたちが使いやすいよう、手洗い器や鏡は高さや大きさを変えている。すべての手洗い器に電気温水器と自動水栓が設置され、寒い冬でもしっかりと手洗いができる。トイレサイン飛騨高山の伝統工芸である「寄木」で作られたサイン。2階児童・生徒用トイレ冬場でもあたたかい温水洗浄便座で安心して使用できる。交流スペース交流スペースの大階段は子どもたちの発表の場としても活用。2階トイレ入り口廊下とトイレの間の手洗いにはベンチを設置。子どもたちのいこいの場や荷物の一時置きに。事 例家庭のようにトイレもほっとできる居場所に豪雪地帯ならではの対策も反映高山市立荘川さくら学園01 新 築 改 修

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